美容師は陰口文化が生まれやすい

2026.10.29

 

私たち美容師は、決して広くない一つの空間で、一日の長い時間を一緒に過ごします。

どうしても人と人との距離が近くなるため、他人の行動が目に入りやすくなります。

美容師として現場に立ち続けながら、目白で美容室スカラを経営してきた私が、美容室という職場で感じていることを書いてみます。

美容室の奥の作業カウンターで、二人の美容師が肩を並べてそれぞれの準備をしている後ろ姿

人との距離が近い場所ほど、細かなことが気になる

広い雪原の端の道に、小さな木の郵便受けがひとつ立っている

混んでいる電車を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。

人との距離が近ければ近いほど、ちょっとしたことが気になったり、必要以上に神経質になったりするものです。

先日、隣のビルにチラシを投函していた人に、住人の方がものすごい剣幕で怒っているのを見ました。

これが、アラスカだったら、チラシは貴重ですから、みんな和やかにのんびり生きています。

人が多く、便利で、距離が近い場所ほど、細かなことが気になりやすい。美容室も、それに少し似ているところがあります。

悪口を言われることより、気になること

私は、自分が悪口を言われること自体は、あんまり気になりません。人間の本能だと思うからです。

でも、それより気になるのは、悪口を言っている本人が、果たして気持ちよく仕事をしているのかということです。

本人に言えば意見、第三者に話せば陰口

新しいカールアイロンを持つ美容師に、同僚が指先で持ち方を示している

例えば美容室で、新しい薬剤や器具を使っている人がいて、「そのやり方、少し違うんじゃない?」と思ったとします。

その場で本人に、「こうしたほうがいいんじゃない?」と伝えれば、それは意見やアドバイスです。

ところが、その本人には言わず、「〇〇さん、あんな使い方してたよ」と第三者に話した瞬間、意味が変わってきます。本人は悪口を言っているつもりはまるでありませんが、立派な陰口です。

本当に相手のためを思っているのであれば、本人に伝えればいい。

同じ空間に本人がいるのに、わざわざ別の人を介して伝える。私は、この形が一番人間関係を悪くすると思っています。

言われた側も、「なぜ自分に直接言ってくれなかったんだろう」と思います。そして、「自分がいないところでも、何か言われているのかな」という気持ちになります。

こうして少しずつ、職場の空気が悪くなっていきます。

陰口を撃退する、二つのこと

明るい店内で、美容師たちが輪になって向き合い話している

では、どうすればいいのか。

一つは、何かあれば本人に直接言う文化をつくること。

もう一つは、誰かから別の人の話を聞いたときに、「それ、本人に直接言ったほうがいいんじゃない?」と取り合わないことです。取り合ってくれない人の前では、悪口を言わなくなります。

この二つだけで撃退できます。

人をきれいにする仕事だから、気持ちよく働いていたい

美容師が、椅子に座ったお客様の肩からケープを外している後ろ姿

人のいないところで、その人の話を延々としても、仕事は一つも良くなりません。生産性もありませんし、何より仕事そのものがつまらなくなります。

美容師は、人をきれいにして喜んでもらう仕事です。だからこそ、働いている側も気持ちよく仕事をしていたい。

誰かのことを陰で言うのではなく、何かあるなら本人に言う。そして、間に入った人も話を広げない。

そんなシンプルな職場にしていきたいと、私は思っています。

遠藤 学(美容室 scala オーナー・スタイリスト)

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